こんにちは。ひまわりです。
元・特別支援学校教諭(退職しました!)です。
今回は、障害のある子どもの進路のうち、高等特別支援学校について考察したいと思います。
特別支援学校と高等特別支援学校。
障害のある子どもの進路選択の際、話題にのぼることもあるのではないでしょうか。
今回は、高等特別支援学校について、支援学校勤務から得た知識を中心に、解説していきます。
今回も長いよ。
必要なところだけ読んでね。
・高等特別支援学校について知る
・高等特別支援学校に入るにはどうしたらいいのかを検討する
・高等特別支援学校卒業後の進路について考える
高等特別支援学校とは
まずは、高等特別支援学校について調べていきましょう。
特別支援教育は、実は、日本でも古くから存在します。
歴史としては、1800年代の韻唖教場にまで遡るのですが、ここではちょっと省略。
歴史的に見ると、高等特別支援学校は比較的新しい学校です。
一体、どんな学校なのでしょうか。
特別支援学校には小学部、中学部、高等部が併設されていることが多いのに対して、高等特別支援学校は、高等部単独で設置される。一般企業への就職ができる可能性が高い生徒に対して、就労に重点を置いたカリキュラムで教育する。1965年、北海道白樺(しらかば)高等養護学校が職業科だけの学校として開校したのが先駆けとされる。ここを含め、高等特別支援学校は現在、17都県に39校ある。
(2012-02-25 朝日新聞 朝刊 栃木全県 2地方)
引用:コトバンク
2012年の情報ですので、2020年現在では、高等特別支援学校の数は変わっている可能性があります。
また、同様の教育内容でも、「高等特別支援学校」という名前ではない場合もあります。
地域によっては、「特別支援学校 職業科」、また、「総合支援学校 職業学科」などの名前になっているところも。
重要な点は「一般企業への就職ができる可能性が高い生徒に対して」という部分です。
逆の言い方をすれば、「一般就労が難しい子ども」は「高等特別支援学校の対象外」になる可能性がある、ということです。
それって、誰でも入れるわけじゃないってこと?
そういうことになるね
希望すれば誰でもが入れるというわけではない、ということに注意が必要です。
入試(入学選抜)については後述します。
そして、もう1つ注意したいのが、「就労に重点を置いたカリキュラム」という点。
「進学」ではなく、「就労」に向けた学校であるということ。
進学を希望する場合には、適さない可能性があります。
(例1)北海道白樺高等養護学校
北海道白樺高等養護学校は、先程の引用の通り、高等特別支援学校の先駆けとなる学校です。
開校50年を超え、高等特別支援学校としては最も古い歴史があり、同窓会等も充実しています。
北海道白樺高等養護学校は「高等養護学校」という名前は使われていますが、
入学者専攻があること、作業学習が中心であることから、高等特別支援学校に分類しました。
(例2)横浜市立日野中央高等特別支援学校
こちらは昭和56年に開校。
部活動などの余暇活動にも力を入れていることがわかります。
学校教育目標の中にキャリア教育も含まれ、「働く」ことに重きが置かれていることがわかります。
また、入学選抜を確認すると、募集人数に対して、志願者数が上回っていることがわかります。
高等特別支援学校の地域差・学校間の格差
高等特別支援学校は、先述の通り、学校名も制度も、自治体単位・学校単位で異なります。
更には、学校内で、専攻がわかれている場合も存在します。
そのため、自宅から通える範囲に、希望に合致する高等特別支援学校があるとは限りません。
それらを考えると、そもそも高等特別支援学校が選択肢に入らないという場合もあるでしょう。
地域差が大きいという点にも注意が必要です。
高等特別支援学校の学習内容
では、一体、高等特別支援学校ではどんな学習をするのでしょうか。
先述の通り、高等特別支援学校では、「就労に重点を置いたカリキュラム」が実施されています。
また、キャリア教育に力を入れている学校も多いです。
そのため、一般の高校に比べると、教科の指導時間は短くなる傾向にあります。
逆に、作業学習など、就労に結びつきやすい科目の学習時間は長く取られる傾向があります。
ただし、先述の通り、学校によって、カリキュラムは異なります。
進学を検討する際は、希望する学校のカリキュラムを確認する必要があるでしょう。
特別支援学校高等部との違い
ほとんどの特別支援学校では、障害のある子どもの場合、入学できないということはありません。
(国立大付属の支援学校等、特殊な特別支援学校はのぞきます)
そのため、重度の障害のある子どもでも進学可能です。
特別支援学校に入学選抜が設けられている場合でも、それは、事前に子どもの発達状況を確認するため。
入学後にどのような支援が必要かを知るためのもの、と考えていいでしょう。
しかし、高等特別支援学校の場合、募集人数が定められていることが多いです。
そして、先述の例のように、募集人数に対して、志願者数が上回ることがあります。
つまり、入学を希望するからといって、必ずしも入学できるわけではないのです。
そのため、比較的障害が軽い子どもが集まりやすいともいえるでしょう。
また、高等特別支援学校では、一般就労(一般企業への就職)を目指していることが多いことも特徴の一つです。
一般的な特別支援学校では、一般就労以外の、作業所などへ就労することも多いです。
その点でも、大きな違いがあるといえるでしょう。
高等特別支援学校に入るには
では、高等特別支援学校に入るには、どんな条件があるのでしょうか。
療育手帳は必要なの? 受験資格は?
基本的に、支援学校は障害のある子どものための学校です。
ですから、高等特別支援学校といっても、やはり、障害のない子どもが入学するのは難しいと考えるべきでしょう。
しかし、療育手帳の有無については、学校によって対応が異なります。
障害はあるけれども、手帳は取得していない。そんなケースもあるかもしれません。
その場合は、学校や教育委員会に相談することが、受験資格を知る早道だと考えられます。
発達障害のある子どもと高等特別支援学校
発達障害のある子どもの場合、療育手帳を取れるのか、難しいケースもあります。
自治体によっては、知的発達の遅れを伴わない場合、療育手帳を取得できない可能性もあるからです。
(療育手帳については別の記事で述べる予定です)
そのため、高等特別支援学校に入学を希望しても、叶わない可能性もあります。
こちらも学校によって対応が異なりますので、確認が必要です。
発達障害に加え、知的発達の遅れを伴う場合については、受験できる可能性が高いでしょう。
知的発達の遅れを伴わない場合は、学校に確認してみる必要があります。
知的な遅れが伴わない発達障害のある子どもの場合、通級指導教室のある高等学校や、発達障害に理解のある高等学校も視野に入れてみましょう。
最近では、特に、発達障害のある生徒のサポートに力を入れた通信制高校などが出現しています。無料で資料請求もできますので、進路の候補の一つとして考えてみても良いでしょう。
入試(入学選抜)はどんなことをするの?
高等特別支援学校では、入試(入学選抜)があることが一般的です。
では、それはどのような試験なのでしょうか。
(例)埼玉県「県立特別支援学校入学選考について」
埼玉県では、特別支援学校の高等部職業学科の入学選考について、以下のページが設けられています。
学力検査に加え、運動能力検査・作業能力検査が含まれています。
高等特別支援学校では地域差・学校差が大きいですので、これはあくまでも一例です。
高等特別支援学校の入試の過去問
では、過去にどんな問題が出たのか、確認する方法はないのでしょうか。
もちろん、確認できる可能性はあります。
まず、多くの高等特別支援学校では、入学に関して、説明会やオープンキャンパスを開催しています。
そこでは、入学後の取り組みなどについて知ることもできますが、教員に質問できる可能性もあります。
こういった機会に、入試について訊ねてみるのも良いでしょう。
また、中学校の教員が、どういった入試があったのかを知っている例もあります。
加えて、自治体の教育委員会が、過去の問題を開示している可能性もあります。
過去の入試について知りたい場合、こういった方法で情報を得られる可能性があります。
高等特別支援学校の受験対策
上記のように、高等特別支援学校では入試(入学選抜)があり、希望者全員が入学できるわけではありません。
ですから、入学を希望する場合、受験対策をされる方も多いでしょう。
学力検査については、これまでの教科学習や過去問への取り組みで対応しましょう。
また、運動能力検査など、学力検査以外の検査については、過去問などを知り、個別に対策する必要があるかもしれません。
高等特別支援学校卒業後の進路
今度は高等特別支援学校卒業後の進路について検討していきましょう。
「高卒」資格との違い
まず、卒業時の資格について。
高等特別支援学校も一般の特別支援学校と同様、「特別支援学校高等部卒業」の資格となります。
高等学校卒業の、いわゆる「高卒」資格とは異なることに注意が必要です。
進路の選択肢
では、進路はどのような選択ができるのでしょうか。
就労について
高等特別支援学校では、「就労に重点を置いたカリキュラム」が実施されています。
そのため、主となる進路は「就労」、特に、一般就労が目標となる場合が多いです。
ただし、高等特別支援学校に行ったからといって、必ずしも一般就労が約束されているわけではありません。
あくまでも、子どもの特性に応じて、進路選択が行われます。
そのため、子どもによっては、一般企業に就労できない場合もあることに留意することが必要です。
それでも、高等特別支援学校の「就労に重点を置いたカリキュラム」は、就労には有利である可能性が高いです。
高等学校などと比べると、作業学習など、就労に結びつきやすい科目に重点が置かれているからです。
進学について
基本的には「就労に重点を置いたカリキュラム」が主となりますので、進学の可能性は低いでしょう。
卒業時に「高卒」資格ではない点も、進学には不利に働く可能性も考えておかなければなりません。
ただし、必ずしも、進学ができないわけではありません。
大学入学資格
では、進学できる可能性はないのでしょうか。
今回は、大学進学について可能性を探ります。
まず、大学進学の条件について確認しましょう。
大学(短期大学を含む。大学院を除く。)の入学資格は以下のいずれかに該当する方に認められます。(2019年1月時点)
1.高等学校又は中等教育学校を卒業した者(法第90条第1項)
2.特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)
(以下略)
引用:文部科学省「大学入学資格について」
引用の通り、大学進学には、必ずしも「高卒」資格が必要なわけではありません。
しかし、次の点には注意が必要です。
・高等特別支援学校では、教科学習の比重が低い場合が多い
これらの理由で、高等特別支援学校から大学への進学は、現状、厳しいと言わざるをえません。
そのため、大学への進学を希望する場合は、高等特別支援学校への進学には慎重になる必要があるでしょう。
まとめ
以上、高等特別支援学校について、入試や進路を含めて、解説しました。
高等特別支援学校は、少し特殊な支援学校です。
就労に向けたカリキュラムなど、魅力的な点も多々あります。
一方で、進学を考えると、進路の幅は狭まる可能性があります。
入学前に、卒業後の進路を含めて、慎重に検討する必要があるでしょう。
コメント
はじめまして。
「高等特別支援学校とは? 障害のある子どもの進路について考える」
を拝読させて頂きました。
大変、分かりやすく、参考になりました。
ありがとうございます✨
はじめまして。
コメントありがとうございます!
ぼちぼち記事を増やしていきますので、また読んで下さい。
よろしくお願いします。