こんにちは。ひまわり(@hattatsusurvive)です。
前回、大学の入試や単位取得について、某大学のA先生にインタビューを行いました。
障害があるとき、大学生活はどうなるのか、疑問に思ったことはないでしょうか?
今回も前回に引き続き、某国立大学のA先生にインタビュー行いました。
大学生の指導について、A先生のご経験を伺いたいと思います。
お話しできる範囲でよければ!
A先生の経験より
では、早速インタビューしていきます!
教員は研究のプロであり、教育のプロではない
大学での合理的配慮について、A先生はどのようにお考えでしょうか?
支援システム自体の整備が進んでるのは間違いありません。
その一方で、運用面ではまだまだ課題が多いと感じています。
障害についての理解は、教員間で格差がある
具体的には、どういった点でしょうか?
システムを運用している教員側は、障害という問題への対応に慣れていないのです。
大学教員の仕事は、「研究」「教育」「運営」の3つに大別されます。
業績評価で重視されるのは「研究」であり、高度な成果を挙げることで採用や昇進が行われているのが実情です。
また「教育」についても、高度な専門知識を伝えることに重きを置く形になります。
障害を抱える学生への対応は、その必要性を含めて、教員側の理解度が追い付いていないのが正直な所です。
「配慮が必要」と判断された重度の学生に対しては、マニュアルに沿って丁寧な対応がなされます。
一方で、軽度の発達障害学生への対応は、教員個人の力量に委ねられます。
私自身は、障害、特に発達障害について関心があり、個人的に勉強もしています。
それでも、十分な対応をするのは難しいと感じています。
義務教育とは対応は異なる
障害のある学生にとって、大学進学は難しい選択です。
例えば、義務教育と比べて、差は感じていらっしゃいますか?
義務教育の現場を知らないので、難しい質問ですね。
まず、教員側の対応力の違いが挙げられるかもしれません。
殆どの大学教員は教育者になるための教育を受けていませんし、障害に対する知識も十分ではありません。
発達障害に対する教員の対応力は、小中学校の教員皆様の方が高いのではないでしょうか。
また小中学校の方が教員と生徒との距離感近いので、生徒の障害特性に気づきやすく、
様々な支援制度に誘導しやすいのではないでしょうか?
大学側が用意しているのは、あくまで、学生自身の申請があった場合の配慮です。
学生自身が自らの特性に気がついていない場合は、支援体制に結びつくのは難しいかもしれません。
これまでの事例について
これまでA先生が接したり、見聞きした事案はありますか?
例えば、車椅子の学生の入学が決まった場合には、学部全体で建物やキャンパス内のバリアフリー化が一気に進みました。
また、精神的に不調な様子の学生を見かけた場合、私はカウンセリングルームへの訪問を勧めたこともあります。
A先生が授業などで配慮した事例はありますか?
精神的な不調を抱えたため授業に出席できなかったとの申し出を、学生から受けることがあります。
そういった場合、まずは私の部屋で簡単な面談を行います。
個々の事情に応じて、代替レポートや課題設定を課すこともあれば、単に不可とする場合もあります。
また、具体的な病名・障害名には言及しませんが、遠隔講義システムを使用したことがあります。
他の学生と同室で授業を受けられない生徒が、別室で授業を受けられるシステムです。
ハイテクですね!
実は、遠隔講義システム自体は十年以上前から存在する割と古めの技術です。
より重要なのは、その受講形式を教務的に認めるというルールが整備されたことだと思います。
全ての大学や学部でこういった支援が受けられる訳ではないと思いますが、今後その方向に進んでいくのではないでしょうか。
発達障害のある学生のケース
発達障害のある学生についての対応などは、ご経験はおありでしょうか?
私は医師ではないので、個別の学生について、発達障害がどうかの判断はできません。
ただ、実験で注意不足が目立ったり、グループでの会話が苦手な学生の対応はしたことがあります。
配慮要請のない学生については、単位についての配慮はできません。
しかしながら、私は、授業やゼミの中で、学生一人一人の個性に合わせた指導は心がけています。
ただ、そのあたりの対応には、教員で格差が生じていると思います。
障害のある学生が、大学を活用する
お話を伺っていて、障害のある学生でも、大学で学びやすいのかなという印象を受けました。
障害の有無に関わらず、全ての学生が学ぶ権利を平等に保障されるべきという考えに基づいていますので。
学ぶことはできるのだ、という印象をもってもらうことは望ましいと思います。
研究室での対応
A先生は理系学部ということですので、研究室についても伺えますか?
そうですね。理系の場合、研究室配属の前後で、学生生活は全く別物になります。
研究室配属のタイミングは大学・学部ごとに違いますが、私の所属組織の場合は4年生の4月からになっています。
講義室間を移動する生活から、大学の中に自分専用の居場所が生まれ、そこで多くの時間を過ごしていくことになります。
そのため、メンバーが固定された空間で、時に協力し合いながら、学ばなければなりません。
そういったある意味閉鎖的な空間で、人間関係につまずく学生がいるのも事実です。
その学生がカウンセリングや病院に通ったりしている場合、そのアドバイスに基づいた適切な措置を取ることになります。
教員としての難しさ
対応が難しいと思われることはありませんか?
非常に多くあります。
例えば病気や障害のある学生の場合、その情報を周囲にどの程度開示しているのかという問題もあります。
そういった場合、事情を知っている教員が当該学生に何らかの配慮を行った場合、事情を知らない他の学生からすると、単なる贔屓に見えてしまう可能性があります。
そういった場合は、どのような対応をされるのでしょうか?
まずは当該学生との人間的な構築が大前提で、私を信頼してもらうことが第1段階です。
当該学生へのヒアリングを通じ、周囲に対し自らがどの程度の情報開示を行っているのか、教員からどの程度開示してよいのかを相談します。
当該学生との約束を踏まえた上で、他の学生に、その学生の状況を伝えるケースもあります。
ただ、当該学生への対応が本当に適切に行えているのか、自信を持って指導することは本当に難しいと感じています。
幸い私の場合は、学内に常駐するプロのカウンセラーに指導方法を相談することができるので、非常に助かっています。
今後の課題
A先生から、今後の課題だと感じることはありますか?
私を含めて、障害という問題に対応する教員側の理解度が、まだまだ足りていないように思います。
どれだけシステムが整備されたとしても、その運用が適切に行われなければ意味がありません。
大学における学びの機会が、障害の有無によらず、全ての学生が平等に享受できることが理想ですね。
詳しくお聞かせいただき、ありがとうございました。
どういたしまして。
ひまわりの感想
詳しい研究内容は控えさせていただきますが、A先生はとある分野の第1線で活躍されている研究者です。
障害や支援については専門ではなく、あくまでご自身で学ばれたとの事。
正直な感想として、A先生のような理解のある大学教員は少ないのではないかと感じます。
そのため、障害のある学生が、こういった先生の指導を受けられるかどうかは運という部分も大きいのではないでしょうか。
それでも、理解のある教員がいることは、障害のある学生にとっても、希望の持てる状況といえます。
また、障害があっても、大学で学ぶ機会が均等に与えられていることは広く知られてほしいと考えます。
前回記事にした、大学としての制度も、同様です。
障害があるからといって、進学や進級を諦めない。そんな「常識」が広まることを、ひまわりは望みます。
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